1 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 15:53:05.49 ID:
dre9Q3s+0 1
今日は冷える。
アンパンマンは風を避けて、地面に着地した。歩くほうがマシだ。
最近頭痛がよくする。頭が重たいというような感じではないのだが、なにか違和感がするのだ。パトロールで空を飛んで
いるときなどかなり酷い。
広場を抜けてしばらく行くと、いつもの煙突が見えて来て安心する。
――やっと一息つける。
扉を開けるとそこにはいつもいるはずの人物たちの姿はなく、代わりにこちらに背中を向けた男がデスクに座っていた。
「やあ、カレーパンマン」
アンパンマンが男に声をかける。
男は振り返りそれに返すと、再び背を向けてなにかの作業に戻った。
「外は最低だよ」
アンパンマンはマントを壁に引っ掛けながら言った。
カレーパンマンは笑った。
「中で書類の整理のほうが良かったか?」
アンパンマンはわざとらしく考えるふりをして見せた。
カレーパンマンが振り返り、しばし沈黙。
「すまん、失言だった」
肩をすくめながらそう答えたアンパンマンに、カレーパンマンは短く鼻でため息をつくと呆れたようにデスクに向かった。
そのときちょうど冷たい風が吹いた。
誰かがドアを開けて入って来たのだ。
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 15:56:21.89 ID:8tXA0HxS0
なんだこの海外ドラマ
2 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 15:53:31.60 ID:
dre9Q3s+0 「あら、二人お揃いで」
アンパンマンとカレーパンマンは振り向かず、その声に挨拶をする。
このパン工場の従業員バタコだ。
「ねえ。二人とも、今日のあたし、なんか違うと思わない?」
背を向けたままの二人は、――アンパンマンは無表情、カレーパンマンはまたか、といった顔をしながら――答えた。
「便秘が治った」
「パットを増やした」
「……サイテー」
バタコは上を向いてため息をついた。
「メイクよ! オシャレしてきたの」
バタコは二人に開いた両手を振って特徴的に言った。
アンパンマンはそこで初めてバタコのほうに振り返り、バタコは待ってましたとばかりの笑みを浮かべた。
アンパンマンは両手を広げて少し目を見開いて見せる。
「どうりで。今日は辺りが霞んで見えると思った」
デスクでカレーパンマンが笑い声をあげた。
「パン屋でメイクはしないほうがいいぞ」
アンパンマンの声にバタコは呆れ果てたように何も言わず、工場の奥の釜戸へ向かった。
それと同時にカレーパンマンが立ち上がる。トントンと資料をまとめると工場の中央の机に置き、自分の
マントを取り扉に向かった。
「待てよ、カレーパンマン」
アンパンマンの声にカレーパンマンが振り返る。
「家はカレーヶ丘だろ? 一緒に行くよ」
「そうだけど、お前明日は非――」
マントを急いで取ったアンパンマンが、何か言いかけたカレーパンマンの肩と抱き、小声で囁いた。
「バタコさんと一緒にいたくないんだ。……わかるだろ?」
カレーパンマンは意味を理解し、目線だけ上に動かし肩をすくめた。
「モテる男は大変で」
4 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 15:56:29.58 ID:
dre9Q3s+0 2
最近バタコのやつが色目を使ってくるとアンパンマンは悩んでいた。
身体をベタベタと触って来たり、やたらと二人きりになりたがったり、パトロールを終えて工場へ戻ると、
わざわざ工場の真ん中でバタコが着替えをしていたりしたこともあった。
カレーパンマンにはよくそのことでからかわれるのだが、自分がしっかりしていれば大丈夫だとあまり深く
取り合ってはくれない。バタコの話にはあまり関わりたくないのだろう。パン工場でバタコを好きな者は少ない。
そもそも現場と上層部は水と油のような関係であるのが世の常だ。アンパンマンは上司としてのバタコもあま
り好きではなかった。確かにバタコがいなければ非常時のパンの交換はできないし、工場長の代わりにパンを焼くこともできる。
しかし、どうも現場のことがわかっていない。指揮を執るのが下手だ。性格にもいい年をして、どうも子供っぽいところがあ
る。一番それが現場でアンパンマンを苛立たせていた。
アンパンマンがそんなことを考えながら三本目の煙草をもみ消したとき、通りの向こうから一人の女が飛んで来た。
「ごめんなさい、ちょっと用意に手間取っちゃって……」
女がそう言って地面に着地すると、アンパンマンはさっきまでの苛立ちは嘘のような笑みを浮かべた。
「いや、ちょうど君のことを考えてたところさ、メロンパンナちゃん」
メロンパンナと呼ばれた女は少しはにかんで見せると、アンパンマンの腕に腕を絡めた。
「……今日は、どこに行こっか」
少し頬を赤らめるメロンパンナを見下ろして、アンパンマンは純粋にかわいいと思う。
そして今日のメイクはいつもより念入りだと思った。これに手間を取ったのだろう。バタコと違い、自ら主張しないのが彼女
の良さだった。
うっすらと入ったチークに、健康的な白すぎないファンデーション、ぱっちりと上がった睫、茶色のアイシャドー――そのど
れもが彼女の魅力を存分に引き立たせていた。彼女は完璧だ。
「今日は君の家に行きたいな」
メロンパンナはさらに頬を赤らめて頷いた。
6 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 15:58:37.66 ID:
dre9Q3s+0 3
翌朝、メロンパンナの自宅で目を覚ましたアンパンマンは呻き声を上げた。頭が猛烈に痛むのだ。
それはすぐに収まったが、痛みが悪化していることはアンパンマンに少しばかりの恐怖を植え付けた。
アンパンマンが服を着ていると、メロンパンナがベッドで目を覚ました。
「おはよう。……昨日はすごかった」
そう艶っぽく言って、メロンパンナはアンパンマンにキスをした。
「元気百倍なのさ」
にっこりと笑ってアンパンマンは答えた。
その後、遅めの朝食を二人で済ませていたとき、家のチャイムが鳴った。
メロンパンナが玄関まで行くと、カレーパンマンが立っていた。
「メロンパンナちゃん、事件だ。すぐ来てくれ」
メロンパンナが戸惑っていると、奥からアンパンマンが出てきた。
「どうしたんだ、カレーパンマン、非番の面子まで揃えなきゃならないほどの事件かい?」
カレーパンマンはアンパンマンを見て、一瞬ばつが悪そうに顔を伏せると少し考えてから言った。
「バタ公が、殺された」
8 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 15:59:49.64 ID:
dre9Q3s+0 4
現場のパン工場はすでに野次馬だらけだった。そんなに大きくない村だ。噂は村だけでは留まらず、町の住人たちまで集まって来ていた。
見張りのいぬのおまわりさんに会釈して、KEEP OUTのテープを三人でくぐる。
凄惨な光景だった。
メロンパンナは思わず口を押さえて外に出て行った。
アンパンマンはメロンパンナを気遣いつつも、ゆっくりとバタコの死体のそばにしゃがみ込んだ。
「死亡推定時刻は?」
アンパンマンが手袋を付け替えながら訊いた。
「まだ鑑識に回してみないことにはわからんが、おそらく今朝三時〜四時半の間だ」
死体のそばに遅れて来たカレーパンマンが答える
「狂った野郎だ。バタ公の頭をカチ割り、脳みその中にメッセージを突っ込んでる」
カレーパンマンが遺体から顔を背けて苛立たしげに言った。
「メッセージ?」
アンパンマンが後ろのカレーパンマンに言うと、これですと近くにいた警官がビニール袋を見せた。
受け取ったアンパンマンがビニール袋を外すと、さらにビニール袋に包まれた一枚のコピー用紙が出てきた。どうやら最初から
ビニール袋に包んで突っ込んでいたらしい。
「中身は何と?」
アンパンマンは紙を取り出さず、訊いた。
「戦いの神アテナは降り立った」
カレーパンマンが答えた。
「……あからさまだな」
アンパンマンが遺体を見つめて言った。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 16:01:11.88 ID:nv8nuy95O
構わん続けろ
10 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 16:02:42.01 ID:
dre9Q3s+0 5
「凶器は鉄パイプのようなものですね」
長い研究所の廊下を歩きながらしょくぱんまんが言った。しょくぱんまんは続ける。
「そして、始めの凶器で割った頭皮の隙間になにか細長いものを突っ込み、こじ開けたんです。てこの原理で」
話を聞きながらまたメロンパンナは気分が悪くなりかけていた。
しょくぱんまんは平然としていつもの表情を崩さない。白い顔に白衣がよく似合っている。
「一度に動いている皮膚の大きさから見て、突っ込まれたものはちょうど包丁の刃ぐらいの大きさのようですね」
後ろを歩いていたカレーパンマンがしょくぱんまんに近づいた。
「つまり何か? このイカれたサイコ野郎は頭の中にメッセージを残すためだけにそんなことをしたっていうのかよ?」
信じられねえぜ、と最後にカレーパンマンは呟いた。
もっともだと、後ろを歩きながらアンパンマンも思っていた。この平和な村に、そんな猟奇的なことを考え出す者がいるとは到底思えないからだ。
廊下の一番奥の扉に到着すると、しょくぱんまんは後ろの三人に向き直った。
「では、私はこれで。なにかわかりましたら、またご連絡します。」
しょくぱんまんが自動扉の奥に入っていくと、カレーパンマンは悪態をつきながら近くの長椅子に腰掛けた。
「何でしょくぱんまんはあんなに冷静でいられるんだ? 知り合いが一人死んだってのによー」
「あれで彼なりに焦ってるんだよ」
すこし不機嫌だった、と隣に座りながらアンパンマンは苦笑した。
「あ、私何か飲み物買って来ますね」
メロンパンナが気を遣って言った。この中ではメロンパンナは一番後輩にあたる。
11 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 16:03:17.52 ID:
dre9Q3s+0 「ありがとう。僕はおしるこ」
「アンパンマンさんいつもそれですね」
メロンパンナはくすりと笑って、カレーパンマンに注文を訊いた。
「俺は……いい……」
そっけなく答えるカレーパンマンに、メロンパンナの見えない位置からアンパンマンが蹴りを入れた。
「いてぇ……あ、やっぱ俺りんごジュース」
メロンパンナは返事をして、自販機まで走って行った。
「……で、あいつをおしるこのある遠くの自販機まで走らせたわけは?」
メロンパンナの足音が遠ざかってからカレーパンマンが訊いた。
「まさか恋愛相談でもしようっていうんじゃないよな?」
カレーパンマンが悪戯っぽく訊いた。
「まさか。それなら君を相談相手には選ばない。――第一発見者からの事情聴取、僕はまだ聞いてないぞ」
アンパンマンが冷たく言うと、カレーパンマンはつまらなさそうに目を細めた。
「なんだ、ならあいつもいて良かったじゃないか」
「あの子はもう限界だ。……これ以上辛い話を聞かせたくない」
アンパンマンはわざと顔を合わせずに言った。
「甘い先輩と、優しいボーイフレンドは違うぞ」
カレーパンマンは苦笑を浮かべてアンパンマンを見た。
12 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 16:03:26.14 ID:
dre9Q3s+0 「わかってる」
アンパンマンはそのまま顔を合わせなかった。
カレーパンマンはしばらくしてため息をつき、目線を逸らした。
「第一発見者はジャムのおっさんだ」
「当然だろうな。誰よりも早くいつも出勤してくる」
カレーパンマンはそこでさっきと同じ、まるでつまらないとでも言いたげな目でアンパンマンを見て言った。
「そこなんだよ」
アンパンマンは前を向いたまま呟く。
「……なぜバタコさんは今日、ジャムおじさんより早く、出勤したか……」
二人の間に沈黙が流れる。
「下手人はバタ公を呼び出せるヤツ」
カレーパンマンが言って、アンパンマンがかぶりを横に振った。
「この村で――、いや、この村どころか町でさえも、知り合いの知り合いは、知り合いだ」
ということは、とカレーパンマンが大仰に一拍置いて言う。
「このイカれたサイコは、俺たちのすぐ近くにいるんだよ」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 16:06:39.07 ID:GR90OGgPO
支援してみようか……
16 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 16:08:41.04 ID:
dre9Q3s+0 6
「ジャムおじさんは何て言ってるんだ?」
アンパンマンは膝に肘を置き、両手を合わせて、両方の親指に顎を乗せた。アンパンマンが考え事をするときのスタイルだ。
「おっさんはいつもの時間に出勤して来たんだそうだ。それがちょうど三時三十分だった」
この時点でバタ公がジャムのおっさんより早くパン工場にいたのは間違いないだろう、とカレーパンマンは付け加えた。
「そして、工場に入ったときにはすでにバタ公は血の海にいたんだとよ。警察よりもまずはお前に電話しようとしたらしいが、
出なかったから俺が呼び出されたんだ」
カレーパンマンの冷たい視線に、アンパンマンは声を出さずに「しょうがないだろ」と口を動かした。
カレーパンマンは鼻で笑って続ける。
「そのときは俺もさっぱりおっさんがなに言ってるのかわからなくて、数十分電話にかかっちまった。だいぶ動転してたな。
……そこから俺がパン工場に到着したのが四時半を回ってからだった」
カレーヶ丘からパン工場までは遠い。自分が電話に出れてたらとアンパンマンは下唇を噛んだ。
「まあ、どっちにしろあの殺され方じゃ誰が行っても間に合ってなかっただろうがな」
カレーパンマンは呆けたように言った。アンパンマンは同僚の気遣いをありがたく思った。
そのとき、二人の横の自動扉が開いた。中から電話の子機を持ったしょくぱんまんが出てくる。
17 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 16:08:53.91 ID:
dre9Q3s+0 「電話です」
そう言ってカレーパンマンに手渡した。
しばらくカレーパンマンは電話に静かに相槌を打っていたが、途中から語気が強くなりだした。
アンパンマンとしょくぱんまんは一瞬顔を見合わせて、電話をするカレーパンマンに注意を注いだ。ちょうど後ろから
メロンパンナも帰って来て、同じくカレーパンマンを見つめる。
「そうか……うん、うん、――わかった」
少し落ち着いてから、その後電話を切ったカレーパンマンは、ため息をついてから呟いた。
「現場と、村一体全てを捜索したが、凶器は見つかってないそうだ」
アンパンマンとしょくぱんまんは言葉をなくしている。
「じゃあ、犯人は町のほうに逃げたんですね」
メロンパンナは手がかりが見つかったと勘違いして言った。
「メロンパンナちゃん……」
カレーパンマンがそんなメロンパンナに声をかける。
「……俺はパン工場まで町の方角から来たんだ」
「え?」
「町まではその間誰とも会ってない。つまり、犯人は村へ逃げ、しかも――」
凶器を消した。
18 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 16:14:31.04 ID:
dre9Q3s+0 7
それから何度か現場検証は行われ、町からパン工場までの時間、パン工場からカレーパンマンの飛行速度で
カレーヶ丘までの時間までも計測された。
パン工場から町まで車だと一時間半、カレーパンマンの速さで町からさらに離れたカレーヶ丘までは四十分
程度という結果が出た。
死亡推定時刻はその後正式に三時半という結果が出た。いまの季節も考慮して前後十分ほどの誤差はあるそ
うだ。
アンパンマンは掃除の終わったパン工場で、資料を見ながら眉間に皺を寄せた。
カレーパンマンによればあの時間、飲み屋もないこの地域で出歩く者がいれば絶対に気付くという。あの日
は満月でかなり明るかったから、そう言える自信もわかる。
犯人が村に逃げたのか。では、凶器はなぜ出てこない。村とのパン工場の関係は友好的で、バタコさんのた
めならと全員の村人が家の中まで礼状なしで調べさせてくれた。さらに町の警官を総動員して途中の川や、川
の下流まで行って捜索した。
しかし、この数日間ついに凶器は出てこなかった。
もう何度目かもわからないため息を吐き出したところで、ジャムが工場に入って来た。
「また頭を抱えているのかね」
資料に夢中で、ジャムに声をかけられて気付いたアンパンマンは驚いて振り返った。
「あ、ああ、ええ……はい。非常に難しい事件です」
アンパンマンは落ち着いて言った。
19 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 16:14:41.38 ID:
dre9Q3s+0 「君たちには期待しているよ……私の大切な従業員の命を奪った犯人を、必ず捕まえてくれ」
「……全力を尽くします」
アンパンマンはしっかりとジャムに頷くと、ジャムはパンを村に届けにまた出て行った。
ジャムを目線だけで見送り、再びアンパンマンは資料に目を落とした。
ジャムは事情聴取で犯人らしき人物は見てないという。第一発見者を疑うのは捜査のセオリーだ。
普通に考えればジャムは非常に怪しい。アリバイはない上に、むしろ死亡推定時刻と発見時刻が被っている。
だが、ジャムには理由がないのだ。バタコを殺すに足る理由が。傍から見ても二人は仲が悪いということは
なかった。かといって恋愛感情があるわけでもなく、従業員同士としてはかなり良い関係だったと言えるので
はないだろうか。数少ない従業員をわざわざ減らす意味もわからない。
それに、凶器が消えた理由を説明できない。
バタコを発見したあとジャムはバタコを抱きかかえたようで、体やコックシューズまでもが全身血で濡れて
いた。外へ凶器を捨てに行けば足跡や、バタコからは不自然な血痕などが垂れてるはずだが、それも見当たら
なかった。
さらにカレーパンマンへの電話は店の電話からかけられていたが、そのあと警察の捜査が及ばない場所まで
移動して再び工場まで帰ってくるのは不可能だ。
アリバイがないだけで犯人にはできない。第一アンパンマン自身その結末を望んでいない。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 16:16:31.64 ID:GR90OGgPO
支援
21 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 16:17:53.95 ID:
dre9Q3s+0 8
カレーパンマンはここ数日町で聞き込みをしていた。
カレーパンマンはあるひとつの見解に辿り着いていたのだ。
犯人は町のほうへ逃げていた。さらに、それは自分の見落としを意味するものではない。犯人もまた、空を飛んでいたのだ。
それもカレーパンマンより高く。
通常アンパンマンたちのようなパンヒーローは、気圧の関係であまり高く飛べない。顔が潰れてしまうからだ。
しかし、もし犯人がパンでなかったとしたら? カレーパンマンよりも高く飛ぶことができるはずだ。
いつも自分で発明した機械に乗ってやってくるあいつならできるのだ。
そしていまカレーパンマンは目の前のその男と睨み合っている最中だった。
「なんかくせぇねずみだと思ったら、何の観光に町に来たんだ? ――バイキンマン」
カレーパンマンは、町から少し離れた草むらに停めたUFOのような機械の前で、煙草を吸っていたバイキンマンに声をかけた。
バイキンマンは自分の研究所用の白衣に黒のタートルネックという身装だった。
「別に。ただの買出しだ」
カレーパンマンはゆっくりとUFOの周りを円を描くように歩き出した。
カレーパンマンは最近の聞き込みでだいぶ苛立っていた。
22 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 16:18:08.74 ID:
dre9Q3s+0 「買出し? それにしちゃあ、ずいぶんと荷物が少ねえな」
カレーパンマンは声を一段低くして言った。
「いまから行くところだからな」
飄々と答えるバイキンマンにカレーパンマンが切れた。
「とぼけるな! ここら辺一帯誰に訊いてもみんな同じ答えだ! てめえが最近町に来て何かを調べてるのはわかってんだよ!
なんだ? なにをコソコソ嗅ぎ回っている!」
バイキンマンはしばらく目を細めて、カレーパンマンを見たあと、煙草を踏み消した。
「バタコを殺した犯人を捜している」
バイキンマンが答えた。
「なぜお前が? 俺たちの真似事をして何か企んでるのか?」
カレーパンマンが理解できないというように言った。
「ここは俺様が征服する町と村だ。俺様の物に手出しはさせん」
バイキンマンが言い、カレーパンマンは鼻で笑った。
「なるほど。まあ、それが本当だろうが嘘だろうが、どうでもいい。てめえには牢屋に入ってもらう。それ以降犯人が出
なきゃお前が犯人だ」
バイキンマンは肩をすくめた。
「逮捕だ、と? 凶器も見つかってないこの事件、一体何の罪で俺様をぶち込むんだ?」
カレーパンマンがスッと腰を落とした。
「いまから俺とやり合えば、公務執行妨害の現逮だ」
バイキンマンはなるほど、とニヤリと笑って身構えた。
どちらかが走り出すか、というそのとき、何人もの警官隊がどこかへ向かっているのが見えた。
思わず構えを崩してカレーパンマンが警官に声をかける。
「おい、何かあったのか?」
「バイキン城で殺しです」
カレーパンマンとバイキンマンの視線が交わった。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 16:18:55.34 ID:c853ffhnO
支援
24 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 16:22:57.82 ID:
dre9Q3s+0 9
現場にはすでにアンパンマンとしょくぱんまんの姿があった。
カレーパンマンとバイキンマンが到着すると、現場検証をしていたアンパンマンが二人に近寄ってきた。
「バイキンマン、あとで話を聞かせてもらっていいかな?」
アンパンマンはどこか気を遣って訊ねた。遺体を覆うビニールシートからは赤い触覚がはみ出していた。
「構わん。ラボでの奥の部屋で待っている」
そう言ってバイキンマンはどこかに歩いて行った。
「殺されたのはドキンか?」
カレーパンマンの質問にアンパンマンは遺体を見て答える。
「いや、これは自殺だな」
「自殺?」
カレーパンマンが言って、アンパンマンと一緒に死体に近づく。
現場の科学捜査班に指示していたしょくぱんまんは二人を見て振り返る。
「自殺なのか?」
カレーパンマンがしょくぱんまんに訊いた。
「ええ、死因は毒物によるショック死ですね。争った形跡はなし、注射針のあとが見つかってなく、近くに
水の入ったコップが落ちていたので口腔摂取で服用したのか、と。恐らく自分から薬を飲んだことは間違い
ないでしょう」
愕然とするカレーパンマンにアンパンマンが声をかけた。
カレーパンマンに顎で外に出るように促す。
26 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 16:23:10.07 ID:
dre9Q3s+0 カレーパンマンがその通り外に出ると、アンパンマンは煙草を一本取り出し、火をつけた。
「なぜバイキンマンといた?」
アンパンマンは煙たそうに目を細めて訊いた。
「……俺はやつに疑いをかけてる」
カレーパンマンは壁に腰掛けながら、面倒だとでも言いたげに答えた。
「正気か? あいつは殺しはやらん」
アンパンマンの口から大量の煙が舞って、風に流れて行った。
「わからねえよ。あいつにとって、お前を倒すのに一番手っ取り早いのはバタコを殺すことだ」
確かにそれは納得できることだった。バイキンマンとアンパンマンの戦いの最中、顔を取り替える芸
当ができるのはバタコを置いて他にはいなかった。
ジャムは老人でもうそんな体力はなく、チーズは言わずともがな、犬だ。
「この町に殺しを考えるようなヤツはいない」
アンパンマンは煙草を地面に落としながら否定した。
「だが現に殺人は起きている!」
カレーパンマンが声を荒げた。
アンパンマンが目を細める。
「おい、――」
「だが、俺はとんでもない思い違いをしていたようだぜ」
アンパンマンの言葉を遮って、立ち上がりながらカレーパンマンは言った。
「しばらくは会わないほうがいい」
そう言ってバイキン城のある崖の上を飛び立つカレーパンマンに、アンパンマンは何も言えず
立ち尽くしていた。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 16:23:34.05 ID:sC12ziR2O
いいぞもっとやれ
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 16:24:53.89 ID:LAkPVy1EO
支援
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 16:26:20.91 ID:c853ffhnO
次に死ぬのはカレーパン
そして誰もいなくなる
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 16:31:38.85 ID:d1OLelKM0
>通常アンパンマンたちのようなパンヒーローは、気圧の関係であまり高く飛べない。顔が潰れてしまうからだ。
思わずワロタwwww
ドキンちゃんが・・・・・・ああ。
34 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 16:49:17.79 ID:
dre9Q3s+0 10
アンパンマンがラボに入ると、バイキンマンは丸椅子に腰掛けて、デスクに座っていた。
アンパンマンは近くにあった同じ丸椅子に座り、目線をあまり合わせないようにしてバイキンマンに向き合った。
「第一発見者はホラーマンだ。発見したときにはもう息をしていなかった、と」
そこでアンパンマンは初めて目線を合わせようとしたが、バイキンマンはデスクのほうを静かに見つめ、沈黙して
いるだけだった。
「本当に……残念に思う」
アンパンマンは一人相槌を打ちながら言った。
しばし沈黙が流れ、やがてバイキンマンは口元にあてていた手を離した。
「鑑識は何と?」
「……おおよその見解は自殺だ、と」
アンパンマンは下を見つめ、気まずそうに言った。
バイキンマンの沈黙は深くなる。
「二、三、質問していいか?」
アンパンマンが訊いた。
バイキンマンは無言のままだった。
35 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 16:49:29.18 ID:
dre9Q3s+0 「最近彼女に変な様子は?」
バイキンマンは黙っていた。あるわけはない。最近も会っていたアンパン
マンもそれは知っているのだから。こんな形式上の質問無意味だ。
「最近町に来ているそうだが、どうしてだ?」
アンパンマンは質問を変えた。
バイキンマンは少し置いて答えた。
「町でバタコの事件を調べていた」
アンパンマンは少し笑みを浮かべた。
「彼女は……幸せものだな」
バイキンマンはそれには何も答えなかった。
「それで……なにかお目当てのものはあったかい?」
アンパンマンはその笑みを残したまま訊いた。
沈黙を貫くバイキンマンに、アンパンマンはいまはそっとしておいたほうがいいかな、と席を立った。
「……アンパンマン、世の中利用する者と利用される者がいる」
アンパンマンが部屋の扉まで来たとき、バイキンマンは尚もデスクを見つめて呟くように言った。
「どういうことかな?」
アンパンマンは振り返って訊いた。
「俺様はいままで悪としてこの世界に存在していた。悪は利用する側の立場に存在するものだ」
アンパンマンは黙って頷いた。そう、だからアンパンマンも存在し得るのだ、と。
「だが、それは俺様の思い違いだったのかも知れん」
また出てきた思い違いという単語を部屋に残し、アンパンマンは現場に戻った。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 16:55:34.32 ID:sC12ziR2O
がんばれ
40 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 17:09:10.94 ID:
dre9Q3s+0 いまストックがなくなって必死に書いてまつ
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 17:29:47.12 ID:dVLrgdnVO
保守
43 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 17:31:24.22 ID:
dre9Q3s+0 11
頭が痛む。
ドキンが死んだ三日後、トースター島にある自宅のリビングでしょくぱんまんが死亡しているのが発見された。
頭蓋骨は割られ、その間には再びメッセージが残されていた。
現場に到着したアンパンマンは、まずドキンとの事件の関連性を考えた。
片や自殺、片や殺人――これが順序が逆ならば説明がつく。
しかし、後追い自殺ならぬ、後追い殺人なのだ。アンパンマンは再び頭を抱えた。
今回も凶器は見つかっておらず、住民のいない島で現場から逃走する犯人の姿も見られていない。
そしてしょくぱんまんのボートがなくなっていた。犯人に盗まれたものとして現在捜索が行われているが、それも
まだ出てきてはいない。
恐ろしく用意周到な犯人だ。だがどこか突発的で、無計画な違和感を感じる。そうアンパンマンは思っていた。
どこかに穴はあるはずだ、と。
そのとき上空から一台のUFOが降りてくるところだった。バイキンマンだ。
バイキンマンはUFOを現場の外にいたアンパンマンのすぐ横に停めた。
「どうしてバイキンマンがここに?」
アンパンマンは素直に疑問を口にした。
44 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 17:31:37.02 ID:
dre9Q3s+0 「鑑識を頼まれた。この島には医学に詳しい人間が限られているからな」
バイキンマンはUFOから降りながら言った。
しょくぱんまんの代理ということらしい。
「そうか。よろしく頼むよ」
アンパンマンは笑みを浮かべて言った。
バイキンマンは何も言わず、煙草をくわえながら現場に向かった。
「そういえば、さっきパン工場でパンを焼いていた。いまは誰が工場を手伝ってるんだ?」
二人でしょくぱんまんの家の廊下を歩いていると、バイキンマンが言った。
「誰もいないよ。僕が手伝えればいいけど、こっちで忙しいし……」
アンパンマンが頭を横に振りながら言った。
「カレーパンマンはどうしているんだ?」
バイキンマンが少し足を遅めた。
「三日前にいなくなってから全然連絡もつかない。今日も現場に来てないんだ……」
バイキンマンがさほど関心もないように歩き続けた。
ふいにアンパンマンの足が止まった。
「――ねえ、いまさっきパン工場でパン焼いてたって言ったよね……?」
バイキンマンが立ち止まって怪訝そうに頷いた。
「どうやってパン焼いてるってわかったの?」
アンパンマンの質問にバイキンマンはさも当たり前のように答えた。
「煙だよ。煙突から煙が出てた」
アンパンマンの表情はそこで固まる。
そして、
「ちょっと僕工場に戻る――!」
そう行っていまきた道を駆け出して行った。
47 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 17:57:20.66 ID:
dre9Q3s+0 12
パン工場の前についたアンパンマンは、入り口の扉脇に背中をぴったり付け、拳銃を下に向けながら弾を確かめた。
弾は全部詰まっている。そして、パン工場の煙突からはいまだにモクモクと煙が吐き出されている。
アンパンマンは一呼吸置いて、意を決して、扉を、開けた。
工場内にバンという叩き付けられたドアの音が鳴り響く。工場内には電気が点いていなかった。アンパンマンは構え
た拳銃と視線を左右に振り、誰もいないことを確認すると電気を点けた。
そこにはうず高く積まれたボートの残骸がただあるだけだった。
アンパンマンはそれを確認すると、すぐに一番右端の部屋の扉に近づいた。背中を合わせ、頭の中で三秒数えると、
部屋に拳銃を向けながら飛び込んだ。
部屋には誰もいない。
アンパンマンがゆっくり部屋のほうへ全身すると、ふいに後ろを駆け抜ける音がした。
――しまった!
アンパンマンが振り返ったときには、誰もいなく電球も割られていた。再びの闇。
アンパンマンは部屋を飛び出し、元いた部屋に駆け戻る。カーテンを開けようとした。
そのとき、部屋の隅から襲ってくる影を見逃していた。
ドンと踏み込む足音で気付くが、なにかで殴られ拳銃を弾き落とされてしまった。
じりじりとアンパンマンが後退すると、相手は凶器を構えながらゆっくり間合いを詰めて来る。
やがてカーテンの隙間から漏れる光で相手の顔が露になる。
「やっぱりあなただったんですね……ジャムおじさん!」
49 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 18:23:14.82 ID:
dre9Q3s+0 ジャムは無言で手の中の凶器を振りかざして来る。
その凶器はパンを伸ばすために使う伸ばし棒だった。
「凶器はそれですか。そして犯人の頭をこじ開けるのに使ったのはパン切包丁――!」
ジャムの右からの攻撃を左手の手刀で流しながら、アンパンマンは前に移動して大きく距離を取った。
「包丁があったのにそれで殺害しなかったのは、それが刺すことに適さないパン切包丁だったから」
そこでジャムはアンパンマンを追いかけるのを止めた。
「そして凶器が伸ばし棒だとわかって、やっと気付きましたよ。凶器の行方」
ジャムは無言でアンパンマンを見つめる。
「あなたのコック帽の中だったんですね」
凶器はあのときもあったのだ。そこに。
カレーパンマンが取り調べをしている最中も。
「あなたはいつも帽子を取らないからまったく不自然に思いませんでしたよ」
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 18:37:04.44 ID:GR90OGgPO
動機は……?
54 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 18:49:55.99 ID:
dre9Q3s+0 ジャムはそこで初めて声を発した。
「遺言は以上かね?」
アンパンマンは身構える。
ジャムは伸ばし棒を投げつけた。咄嗟のことで反応が遅れたアンパンマンは、伸ばし棒を避けることに集中して、
ジャムがテーブルの上のコップに手をかけるのに気付けなかった。
その水がアンパンマンの顔を襲う。
「ふぁぁ〜……顔が濡れて力が出ないよぉ〜」
アンパンマンがくず折れる。ジャムは投げつけた伸ばし棒を拾い、アンパンマンに向かって構えた。
「私の秘密と共に眠れ、アンパンマン――!」
ジャムが棒を振り下ろす瞬間、刹那の銃声。アンパンマンが瞑った目を開くと、ジャムの手からは伸ばし棒が消え
ていた。
「手を上げて背中を向けろ!」
窓の外には拳銃を構えたカレーパンマンがいた。カレーパンマンは隣にいる誰かに指示を出すと、工場の扉から続々
と警官隊が突入して来た。
ジャムはあっという間に警官たちに取り押さえられ、黙秘権の行使や裁判での権利などを説明されながらパトカーに
向かっていった。
「遅ぇよ」
後から入って来たカレーパンマンにアンパンマンが言った。
「生きてるだけマシだろ」
アンパンマンが笑った。
「違いない」
二人でそう言って笑い合ったあと、アンパンマンが言った。
「この三日間どこにいたんだ?」
「ドクター・ヒヤリのところだ」
アンパンマンが驚く。
「あの、バイキンマンの知り合いの博士か」
カレーパンマンが頷く。
「ヤツ、少し脅したらすぐに白状しやがった。研究所で新種の覚せい剤を作っていると、な」
55 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 18:58:44.30 ID:
dre9Q3s+0 「まさかそれをサバいていたのが――」
カレーパンマンが無言で頷く。
アンパンマンは呆れたようにため息をついた。
「でも、どうやって? こんな地域で取引なんかしてたらすぐバレちまう」
カレーパンマンがうつむいた。
「……おい? なんだ? なにがあるんだ!」
黙っていたカレーパンマンに何かを察したのか、アンパンマンが語気を荒げる。
「それは俺様から説明しよう」
二人が振り返ると、バイキンマンがいた。
57 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 19:10:18.49 ID:
dre9Q3s+0 13
バイキンマンが二人の隣に腰を下ろすと、煙草を一本取り出し火を点けた。
「禁煙だぞ」
アンパンマンが言ったが、バイキンマンの失笑をかっただけだった。
バイキンマンは煙草を二回吸ってから、話し始めた。
「お前の頭の中に、覚せい剤が入っている」
「は? なに言ってん――」
「最近原因不明の頭痛がしてないか?」
嘲笑しようとしたアンパンマンをバイキンマンの言葉が遮った。
図星だった。
「そ、それは最近頭の交換をしてないから――」
「なぜ交換をしてないんだ?」
また遮られた。
「それは……」
バタコが死んだからだった。
アンパンマンは声が出なかった。
「おそらくバタコを殺したのは頭を交換させたくなかったんだろう。足を洗いたかったのかも知れん」
「だ、だけど、それで殺す必要は……」
アンパンマンがそう言いかけて、バイキンマンは少しうつむいた。
「そこでドキンの死が関係してくる」
58 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 19:10:33.26 ID:
dre9Q3s+0 ちょっとご飯食べてきまつ
74 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 19:47:57.89 ID:
dre9Q3s+0 「やっぱり自殺じゃなかったか」
カレーパンマンがそこで会話に入ってくる。
バイキンマンは頷いた。
「あいつは覚せい剤を買っていた。俺にも勧めてきたことがある」
アンパンマンとカレーパンマンは沈黙する。
「俺に勧めるぐらいだ。当然しょくぱんまんにも勧めていたんだろうな。あいつらはできていた」
「そこでドキンちゃんの死に疑いを持ったしょくぱんまんが、一人で解決しようとジャムのおっさんを呼び出し……、ジャムが口封じに殺害した」
カレーパンマンがまとめる。
「ドキンを殺害したのは喋り過ぎた顧客を始末したってところだろう。いつも渡してる薬を毒薬と交換すれば勝手に飲む」
バイキンマンが言う。
「しょくぱんまん……いつも冷静なあいつが……どうしてそんな無茶を……」
カレーパンマンが肩を落とした。
「しょうがないよ……。僕もここに一人で乗り込んだんだ。仲間たちが殺されて冷静になれるやつはいない」
アンパンマンが優しく言った。
「どうやってドキンちゃんとジャムおじさんは取引をしていたんだ?」
いくらか落ち着いたアンパンマンがバイキンマンに訊いた。
「……お前、自分の頭のパンが交換したあとどうなるか知ってるか?」
逆に質問されてアンパンマンはかぶりを横に振った。
「消えるんだ。跡形もなく、な。しかし、そこに異物があるとそれだけ残して消えていく」
「じゃあ、ドキンちゃんはアンパンマンに吹っ飛ばされたあと、こっそりそいつを回収しに来ていた、と?」
バイキンマンにカレーパンマンが言った。
79 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 20:06:43.06 ID:
dre9Q3s+0 バイキンマンは頷く。
「それだけじゃない。カバ夫、みみ先生、いぬのおまわりさんの中にもジャムの覚せい剤を買っていたヤツが見つかった」
アンパンマンが俯いた。
「町中で戦うこともあったからな……戦いの最中なら誰がなにをしていても気付かない」
知らずに利用されていたことを恥じているかのようだった。
「俺様もだ。天下の大悪党が、利用されるなんてな……!」
バイキンマンは煙草をぐっと噛んだ。
その煙草を床に吐き捨てると、立ち上がった。
「どこに行くんだ?」
カレーパンマンが訊いた。
「俺様はもっと自分を高める。こんな糞ったれが現れないような世界にするために、な」
アンパンマンが笑った。
「お前らしいよ」
バイキンマンは静かに出口を出て行った。白衣が風に舞っていた。
「そいじゃ、俺もそろそろ……」
カレーパンマンが立ち上がった。
アンパンマンが見つめる。
振り返ったカレーパンマンの手の中には拳銃が握られていた。
その銃口はアンパンマンの頭に向けられていた。
「――アンパンマン、そのお前の中身、くれないか?」
終
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 20:10:29.99 ID:c853ffhnO
よく終わらせた
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 20:11:35.53 ID:pXqYgyuW0
乙
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 20:12:40.89 ID:hWIy1IDqO
乙、楽しませていただいた
83 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 20:12:41.68 ID:
dre9Q3s+0 ていうか、ちょっとめんどくさくなってだいぶ端折ったw
なにか質問とか感想とかあったらどうぞー
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 20:13:30.21 ID:qT9TIUlXO
乙。おもしろかった。
バイキンマン男前すぐる
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2008/11/10(月) 20:15:08.37 ID:egOVO5Hf0
バイキソかっこいいなb
87 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 20:17:00.53 ID:
dre9Q3s+0 >>85-86
バイキンマンは好きなんだ
だからかっこよくしてあげたかった
理由は俺の彼女がドキンちゃんに似tうわなにするやm
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2008/11/10(月) 20:24:42.18 ID:SXZIF/0c0
乙、おもしろかったよ
またこんな感じの作風の話とか読んでみたいかも
90 :
◆G57Ahpg3ak []:2008/11/10(月) 20:26:00.21 ID:
dre9Q3s+0 >>88
実は今度ブーン小説に挑戦しようかと思ってるんだ
またできたらスレ立てるよ
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2008/11/10(月) 20:28:28.09 ID:SXZIF/0c0
>>90
おお、楽しみにしてます
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 20:28:52.20 ID:GR90OGgPO
乙
おもしろかった
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/11/10(月) 20:29:04.87 ID:T1lbLCWfO
乙でした!